選べる相続 寄付者インタビュー第一弾
実際に寄付の遺言書を作成された方へのインタビューシリーズ第1弾は、静岡県富士市にお住まいの70代女性Aさんにお話を伺いました。葬儀屋を営み、承継寄付診断士でもある息子Yさんも同席してくださいました。
Aさん:孫達が普段お世話になっている子ども食堂へ30万円寄付することにしました。もし、私が死んだ時にその子ども食堂が無くなってしまっている場合は、富士市内の子ども食堂に寄付がいくようにしました。
Aさん:いえいえ、初めてしましたよ!人生で初めての寄付です。息子からの紹介だったんですが、寄付ってお金持ちの人が何百万、何千万て大金をするイメージが強かったもんですから、勧められた当初は「私なんかが・・・何を言ってるの!」という感じでした。でも、よく話を聞いたら「1万でも2万でも、自分の気持ちで良いんだよ」ということだったので、それなら私にもできるなって思ったんです。
遺言書の作成を担当してくださった専門家の方も、ご自身の祖母の遺贈寄付の手続きをされたと聞いて安心して相談ができました。
Aさん:手続きは思ったよりも簡単でしたね!
寄付先は、最初は老老介護のことなどを考えて福祉関係の施設にしようかと思っていました。ですが調べてみるとこういったことの制度は比較的整っているんですね。
子ども食堂は孫達が行っているので言葉は知っていたのですが詳しくは知りませんでした。テレビなどでシングルマザーや貧困問題が取り上げられているのを見て、子ども食堂はどうやって運営されていて、どんな人たちが通っているかを知ったんです。
それで、実際に自分も孫達と一緒に子ども食堂に行ってみたりして。楽しそうな雰囲気ですごく良いなと思いつつ、これを運営するのはとても大変そうだな、、とも思いました。運営に携わるというのは私には難しいけど、ちょっとでも力になれれば、と寄付先に選んだんです。
金額は息子がこれくらいで良いんじゃないっていう額に決めて、後の手続きは特に難しいことはありませんでした。
手続きを終えたあとは、なんだか「やり遂げた」という気持ちがありましたね。私は専業主婦だったので、最後に社会にポンと足跡を残せた気持ちになりました。「ちょっと私、やったわよ!」って。
息子Yさん:母親のお金は母親本人のものなので、死んだ後でも自分が思うように使ったら良いと思っています。相続でもらえたらラッキーですが(笑)。
僕自身、今は子育て中でまだ子どもの心配が多いですが、子どもが二十歳を過ぎて子育てがひと段落したら、自分のお金の出口は自分で決めたいですね。
「遺贈寄付」は承継寄付協会をきっかけに存在を知りました。ふるさと納税などで「寄付」はかなり身近になってきていますが、いくつかある寄付の中で、遺贈寄付ってとても理にかなった仕組みだと思います。
80代で亡くなると、おそらく60代くらいの子どもへ相続がいくわけですが、みんなが相続ばかりしていると上の世代でお金が回って若い世代にお金が回らないんですよね。
Aさん:私には97才の母がいますが、母が亡くなると70代の私に相続されるわけで、この歳になって相続をもらっても、どうしようもないですよね。
Aさん:自分が倒れてしまった時どうなるんだろう、と色々考え始めました。今は元気でも明日何があるか分からないじゃない。それで、息子達に「口座の暗証番号は〇〇だよ」とか「保険の情報はどこどこにあるよ」なんて情報を教えはじめました。そしたら、遺贈寄付の話があったんです。
息子Yさん:遺贈寄付をきっかけに、母親の考えを知ることができて安心しました。
元気なうちに、死んだ時や死んだ後のことについて話しておくってとても大事だと思います。生死の境が近くなるほど、それどころじゃなくなって聞きづらくなりますから。気軽に、笑いながら話せるうちにしておけると、家族としては嬉しいですし安心です。
息子Yさん:5年ほど前に地元に戻り葬儀屋を始めました。色々とお葬式に出ることもあったのですが、お葬式って誰が死んでもどれもおんなじ感じじゃないですか。それで、型にはまらないで、カスタマイズできるお葬式はニーズがあるんじゃないかと思って始めたんです。
Aさん:ほんと色んなお葬式があるみたいですよ。お葬式というのは涙だけじゃなくて、思い出を話しながら笑顔があるお葬式もたくさんあるという話を聞いたりするので、私もそういうお葬式ができると良いなと思います。
「よくお酒をのむばあばだったね。ビールとワインで乾杯ね!」というお葬式にしたいですね。葬儀のお手伝いに時々いきますが、その際に「私の場合はここはビールね!」なんて伝えたりしています(笑)。
遺贈寄付もお葬式の際のネタの一つになると良いなと思います。みんなで遺言書をみて「ばあば、こんなこと考えてたんだね」って笑いながら話してくれると嬉しいですね。