豊かな自然を未来の子どもたちに残したい。独立性を貫く国際環境NGOにとって遺贈寄付の意義とは/グリーンピース・ジャパン
世界55以上の国と地域で活動し、一国では対処が難しい地球規模の環境問題に、グローバルな連携で挑む国際環境NGOグリーンピース。企業や政府からの財政支援を受けず、個人からの寄付のみで活動を展開しています。徹底した現場主義と科学的根拠に基づく提案、行政・企業・市民など多様な立場の人々との協働を軸に、経済活動や政策決定の場で環境保護が当たり前となる社会を目指すグリーンピース・ジャパンで、活動の土台ともいえる資金調達や遺贈寄付などを担当されている、ファンドレイジング部マネージャーの吉野良子さんにお話を伺いました。(取材日:2024年5月9日)
ファンドレイジング部マネージャー 吉野良子さん
子どもたちのためにより良い未来を残せるようシステムチェンジを実現できる仕事で社会貢献したいと考え、2015年に入職。小学生の愛娘が一人。博士(社会学)
___「財政の独立性」がグリーンピースさんの特徴の一つかと思います。活動の軸となっている考え方について教えていただけますか?
グリーンピースは設立以来のポリシーとして、非暴力と財政的独立性をかかげています。企業や国連、政府からの財政支援は受けず、個人、または個人が設立した財団からの寄付に限るという財政の独立性があるからこそ、信頼できるとして寄付をくださる方も少なくありません。とはいえ、日本は欧米や諸外国に比べて寄付文化が根付いていないという背景もあり、日本支部の活動に必要な資金は国内の寄付だけでは足りていない現状もあります。弊団体は、国際的な団体なので、諸外国で集められた寄付の一部が日本での活動のために助成されています。できれば、国内の活動については国内の寄付で実現していけるようになりたいと考え取り組んでいます。
企業や政府からの財政支援を受けないというのは、資金的には苦しい面もあります。しかし、だからこそ、大企業や政府に対しても忖度せずに主張を述べることができるなど、できることはたくさんあります。多くの方にまずそのことを知っていただき、応援していただけたら嬉しいです。通常の寄付はもちろんですが、遺贈寄付は私たちの活動を後押しする大きな力になっています。
私たちは長年、世界的な規模で環境問題に取り組んできた団体です。今ある環境問題の多くは、私たちの社会が環境よりも経済的な利益を優先させてきた結果、生み出されたものです。
そうした社会のあり方を作ってきたのは、私たち一人ひとりの経済活動ですが、根源にはそれを支える政治や企業の活動といったものがあります。環境問題を対処療法ではなく、より根本的に解決していくためには、環境問題に対する関心が社会の中で高まると同時に、政治や行政、企業といった重要なステークホルダーがより積極的に行動変容を起こしていくことも重要です。そのために、私たちは独立した立場から科学的根拠に基づいた調査結果やデータを用いて問題提起をし、多様なステークホルダーの方々と、ともに問題を解決していける対等なパートナーでありたいと願っています。問題解決のためには、ときには相手にとって耳が痛いことも率直に伝えなければなりません。私たちが財政の独立性を保って活動をしているからこそ、率直で真に問題解決のために必要な対話が可能になると考えています。
グリーンピースのそうした姿勢に信頼を寄せてくださる方のためにも、独立性を保ちながら、ステークホルダーの方々とも一緒に問題を解決していくスタンスを大切にしてまいりたいと考えています。
___そういった団体のスタンスに対して、寄付者の方の信頼を感じる瞬間はありますか?
たくさんあります。私たちの活動を応援してくださる方は50代以上の方も多く、長年寄付を続けてくださる間に、現役生活からリタイアされた方もいらっしゃいます。なかには、年金から寄付してくださり、「貧者の一灯だけど、この気持ちをグリーンピースに託したい。グリーンピースは必ず行動してくれるから」とおっしゃってくださる方もいます。
あるいは、大切な家族の遺産の中から、故人が生きた証としてグリーンピースの活動に寄付を託してくださる方もいらっしゃいます。そのような言葉や想いに触れたときに、寄付だけではなく、その方の真心を託していただいているのだと胸が熱くなります。
私たちは、企業への働きかけや政策提言を主としていますが、その一方で、市民の皆さんと協働し、草の根の力で社会に働きかけていく活動にも力を入れています。例えば、国を動かすには大きな力が必要です。小さな声はなかなか国には届きにくいという現状がありますが、一人ひとりの市民が自分の住む自治体に対して上げる声は、比較的届きやすく、社会を変える力になり得ます。
グリーンピースの活動で一歩踏み出した市民がそれぞれの場所で声を上げ、自分の住む自治体を変えることで、やがて国や社会全体を動かす大きな力へとつながります。そんなアクションを起こしていく人たちを応援して、みんなで社会をよりよく変えていくことにも力を入れています。市民の力を信じ、とも行動している団体なので、寄付者や活動に参加してくださるボランティアの皆様の想いや信頼に直接触れる機会を持てることは、スタッフにとって大きな励みになっています。この仕事に、とてもやりがいを感じる瞬間です。
___遺贈寄付に取り組まれたきっかけと時期をお伺いできますか?
他国の支部、特に欧米諸国ではすでに遺贈寄付は特別なことではなく、誰もがその人のできる範囲の中で参加できる寄付のあり方として定着しています。全体の寄付収入に占める遺贈寄付の割合も少なくありません。グリーンピース・ジャパンとしては、遺贈寄付という形での社会貢献のあり方と寄付者の方の想いをしっかりと受け止め、託していただけるように環境を整えたのが2018年頃です。受け入れを開始してからは、まだ10年経っていないというところです。
___遺贈寄付に取り組まれて以降、反響はいかがですか?
最近では、日本でも遺贈寄付という社会貢献のあり方が広まってきたように感じます。弊団体も、相続財産からの寄付を複数いただいており、遺言書を作成してくださった方も多数いらっしゃいます。お問い合わせの件数も、年を追うごとに増えている状況です。
大変ありがたいことに、グリーンピース・ジャパンに長く寄付をくださる方が多くいらっしゃいます。大切なご家族が亡くなられた際に、相続された財産の中から、「いつもの寄付の延長で、今回はまとまった額を寄付したい」と、寄付をくださる方も多いです。なかには、亡くなられた方が日頃から弊団体に寄付をしてくださっていて、そのことをご存知だったご家族の方が、故人の遺志を尊重して相続財産の一部を寄付してくださったケースもあります。
___たくさんの方の想いに支えられていることが伝わってくるエピソードですね。これまで遺贈寄付に取り組まれてきた中で、感じていることはありますか?
この数年は、今まで弊団体と関わりのなかった方からもご連絡をいただくことが増えました。「遺言書をつくりたい」あるいは「遺言書をつくりました」と知らせてくださる方がとても多く、社会の中に仲間が増えていっているような、あたたかい気持ちになります。弊団体を遺贈先の一つとしてご検討くださる方も増え、これほど心強いことはない、と感謝しています。
寄付者様や遺贈寄付に関する資料をご請求くださった方などに向けて、無料の終活セミナーや、遺言書の書き方セミナーなどを開催して、専門家の方のお話を聞く機会も設けています。皆様とても積極的にご参加くださり、サポーター限定の場という安心感もあるのか、たくさんの質問が出て、講師の先生が驚かれるほどの盛り上がりを見せることもあります。
私たちの寄付者の方に限ってもこれだけ関心のある方が多くいらっしゃるので、もっとたくさんの方が遺贈寄付に関する情報を求めているのではないかと思います。社会貢献の新しいあり方のひとつとして遺贈寄付についてより多くの方に知っていただき、気軽にご検討いただけるよう、イベントの共催など、他団体さんとも協力しながら取り組んでいます。
寄付者の方の最後の社会貢献の機会や、その想いを実現するための伴走をさせていただき、寄付者の方に幸せを感じていただけることは、私にとっても大きな幸せを感じられる機会となっています。
___最後に、遺贈寄付にご興味をお持ちの方へのメッセージをお願いいたします。
私たちの活動に関心をお寄せいただき、ありがとうございます。「環境問題」と聞くと、自分の日常とは遠い存在だと感じる方もいらっしゃるかもしれません。ですが、環境は私たちの暮らしの土台です。豊かな環境と自然の恵みがあってはじめて、私たちは安心して心豊かな暮らしを実現できますが、わずか数百年の人間の活動が地球環境や生態系に大きな負荷を与えるようになりました。
夏の尋常ではない暑さや世界中で起きている豪雨災害は年々、深刻化しています。多くの人が、何かおかしいと肌で感じているはずです。そして、本当にこれはまずいと気づいた時には、「時すでに遅し」となってしまっては、取り返しがつきません。今ならまだ間に合います。また、今を生きる大人の私たちだからこそ、未来の子どもたちのためにできることがあると信じています。
貧困問題や紛争、災害など、目の前に解決すべき課題がいくつもあると感じていらっしゃると思います。環境問題や気候危機は、それらすべての問題と深くつながっています。環境破壊や気候変動による自然災害の増加が、貧困をさらに悪化させ、新たな紛争を生み出す引き金となっています。土台にある環境問題にも同じ熱量で解決を目指していくことが、いま地球上にあるたくさんの問題を解決していくためには不可欠であると考え、取り組んでいます。
豊かな自然環境とこの地球があってこそ、私たち人間の暮らしや未来もあるのだということにお心をお寄せいただく方が増えることを願っています。次の世代に明るい未来を手渡していくために、ともに活動する仲間となり、応援していただけたら嬉しいです。
<寄付で実現できる活動の一例>
グリーンピース・ジャパンへの遺贈を具体的にご検討いただいている方、あるいは弁護士など専門家への無料相談を予約してくださった方には、終活にご活用いただける、特製エンディングノートをプレゼントいたします。
遺贈寄付に関するお問い合わせ窓口
TEL:03-4330-7678(平日:9時〜17時)
フォームからのお問い合わせはこちら
・団体名
一般社団法人 グリーンピース・ジャパン
・所在地
東京都港区新橋3丁目3-13 Tasa Hibiya 12階
・代表者
日本事務局長 サム・アネスリー
・設立年
1989年(日本支部の設立年)
・受賞歴
1997年 国連オゾン層保護賞受賞 ほか
<ビジョン>
地球の恵みを、100年先の子どもたちに届ける。
<ミッション>
自然を守り、命を守り、私たちの未来を守る。
<活動概要>
世界55以上の国と地域で300万人以上のサポーターと共に活動する国際環境NGO。企業や政府からの財政支援を受けず、個人寄付で活動を展開。現場主義と科学的根拠に基づいた提案、行政、企業、市民など多様な立場の方々との協働を軸に、経済活動や政策決定の場で環境保護が当たり前となる社会、持続可能な未来をめざします。
1. 森と海と命を守り気候危機を止める
平均気温の上昇を1.5度未満にという未来を守るための目標の達成が危ぶまれています。
海や森林を乱開発から守り、石炭火力や原発ではなく再生可能エネルギーを増やし、経済モデルを脱炭素化するために活動しています。
2. より持続可能な循環型の社会へ
大量生産・大量消費・大量廃棄を改め、資源を有効活用し自然を再生する。そんな循環型社会をめざし、使い捨てプラスチックや食品ロスの削減などに取り組み、新しいビジネスモデルの提案を企業に働きかけています。
3. 脱炭素社会を目指して~市民が主役の改革を
「みんなの力をあわせたら法律が改正された!」。私たちと一緒に行動を起こした結果、法案が国会成立した時の参加者の声です。自分たちの力で自分の町を脱炭素化しようと行動する人をサポートし、自治体で変化を生み出しています。