どんな環境に生まれても、子どもたちが人生を切り拓く力を育む長い道のりを遺贈寄付で支える/カタリバ
家庭の経済状況や家族のケア、災害など、生まれた環境や暮らす地域で「格差」が広がっています。カタリバは、どんな環境に生まれ育つ子どもでも、未来をつくりだす意欲と創造性を持つことができる社会を目指し、2001年から国内で活動する教育NPOです。国内6箇所に子どもたちが安心して過ごすための居場所施設を設け、災害時には被災地での緊急支援を行うなど、20年を超える活動の中で50万人以上の子どもたちに寄り添い続けてきました。同団体で遺贈寄付を担当されている野口雄志さんと松本真理子さんにお話を伺いました。(取材日:2024年5月17日)
野口 雄志さん(写真左)
新卒で三井住友銀行に入行し、不動産融資担当後、相続業務へ異動。士業とともに相続案件や遺言信託の組成を多数行う。その経験を活かし、カタリバで遺贈寄付を担当。
松本 真理子さん(写真右)
2001年カタリバ創設時から活動に関わる。東日本大震災の被災地の子ども支援拠点「コラボ・スクール」の運営や、広報などを経て、現在はメルマガ作成と遺贈寄付を担当。
___まずは、遺贈寄付に取り組まれた時期からお伺いできますか?
野口)以前から、遺贈寄付をいただくことはありましたが、お申し出があったら対応させていただくという形で、遺贈寄付を受け入れていることを積極的にPRすることはしていませんでした。2019年ごろから、新聞などさまざまなメディアを通じて発信するようになり、本格的に取り組み始めてから現在で5年になります。
___本格的に取り組んでみて、反響はいかがですか?
松本)積極的に発信していく中で、お問い合わせがどんどん増えていることを実感しています。2023年度は資料請求だけでも100件近くいただきました。また、新聞広告などを出すと、50件から100件ほどのお問い合わせをいただくこともあります。反響は、年々増えているように感じます。
野口)本当に多くの反響をいただき、ありがたいことです。当初は、既存の寄付者の方が多いのかと思っていましたが、実際には4対6くらいの割合で、これまでカタリバへの寄付歴のない方からのご寄付のほうが多いです。資料請求の割合で見ても、だいたい同じです。ご自身でいろいろとお調べになる中で、カタリバにたどり着いてくださった方も多く、遺贈寄付について発信していくことの大切さを感じています。
___これまでの取り組みの中で、特に印象に残っているケースはありますか?
野口)それぞれに思い入れがあるのですが、既存の寄付者の方が、遺言書を書いてくださったケースをご紹介したいと思います。その方は、5年ほど前から毎月継続的なご寄付をくださる方で、ご自身で商店を営まれていました。またボランティアで地元の障がい児施設での支援活動をされたこともある行動力のある方です。そこで出会った子どもたちの笑顔に元気をもらった経験から、子どもたちの未来のために寄付という形で何か力になりたいとおっしゃって、カタリバへの遺贈寄付を検討してくださいました。
少額の継続寄付から始めて、毎月お送りしている活動報告のメルマガや、テレビで東日本大震災の際のカタリバの活動が紹介された報道を見てくださったりして、活動への理解が深まるにつれ毎月の寄付を増額してくださいました。さらに、単発で少しまとまった額のご寄付をしてくださったりする中で、最終的には遺言書を書いてくださいました。
先日、ご自宅にお礼に伺ったのですが、その時「カタリバさんのことが大好きです」とおっしゃってくださり、さらにご夫婦それぞれがカタリバへの遺贈寄付の遺言書を書いてくださっていることが分かりました。とても温かい想いでご支援をいただいていることに胸が熱くなりました。遺贈寄付は、寄付者の方の想いを直接受け取ることができる点にやりがいを感じています。
___松本さんはどのような場面でやりがいを感じますか?
松本)やはり、大きな想いを託していただいていると感じる場面に多く出合えるということですね。特に遺贈寄付は、自分の生きた証をどう残すかという、いわば人生の集大成のような決断になります。その中で、カタリバという団体を選んでくださったことに想いの大きさをとても感じます。そして、その想いを受け取って、子どもたちの未来のために届けていくということは、価値があることだと思いますし、やりがいを実感するところでもあります。
先ほどご紹介させていただいた方も、皆さんが想像されるような資産家というよりは、共働きで地道にお仕事を続けてこられた方です。ご自宅に伺った際に、色々なお話を聞かせていただきました。「仕事が好き」とおっしゃっていましたが、きっといい時ばかりではなかったのではないかと想像しています。子育てとの両立など、ご苦労もされ、築いてこられた財産を、私たちに託してくださることを本当にありがたく感じました。お一人おひとりの人生の物語をお聞きできるのも、この仕事の醍醐味だと感じています。
___カタリバの活動において、遺贈寄付がもつ意味とは何でしょうか?
野口)私たちの活動は、一言では「子ども支援」ですが、実際の活動は、毎日子どもたちが来て、勉強して、一緒にごはんを食べて、時には季節の行事を体験する機会を持ったりと、日々の営みを積み重ねていくものです。子どもたちは「1日や1回の支援」で変わることはなく、数年間かけて「子どもたちの日々に伴走」する形の活動です。ですので「今日あった場所が、明日なくなる」ということは、あってはいけません。
そうした場合、遺贈寄付は「継続する」という部分を大きく後押ししていただいていると感じています。長い時間のなかで、寄付者の方が積み重ねてきた財産(お金の意味だけでなく)を、子どもたちが大人になるまでの10年間を支える活動に、バトンを渡していく。それが、私たちがご遺産からのご寄付を受け取る意味だととらえています。
継続していくことは、見かけ以上に大変なことです。相手は思春期の子どもですし、家庭環境も複雑な子が多いため、スタッフと信頼関係を築くにも時間がかかります。時には、半年から1年ほどかかることもあります。最初は、何か言うとすぐにふてくされていた子も、成長して中学3年生くらいになると、自分のことを思って言ってくれていることに気づき、心を開いてくれることもあります。本当に、日々少しずつ変化していくものなので、とにかく長く続けるということが大事だと思っています。
___どれぐらいの期間、カタリバに関わる子が多いのですか?
松本)3年ぐらいの子が多いですが、長い子では10年ぐらい関わり続ける子もいます。小学生だった子が、中高生や大学に入るまで関わり続けることになりますので、その場所が継続して存在するということが大事になってきます。文字通り「子どもが大人になるまで」の支援をしています。また18歳を過ぎても、何かあった時にいつでも相談できる、そこに行けばスタッフがいるという場があることが、とても大切だと思っています。
___その場がそこに存在し続けているということが支えになっているんですね。
松本)そうですね。卒業生の中には、大学生になってカタリバのボランティアとして戻ってきてくれる子もいます。今、団体で働いているスタッフの中にも数人の卒業生がいます。活動を継続しているからこそ、そういった循環も生まれるわけで、継続を支えてくださる寄付者の皆様には本当に感謝しています。
野口)東日本大震災の際にカタリバが支援した子どもたちが、2024年に発生した能登半島地震の際には現地で活動を支えてくれました。自分たちと同じ想いをしないように、あの時自分たちが支えてもらったようにと、すごく頑張ってくれています。
松本)経験者だからこそ語れることがたくさんあります。自分の経験を能登の子どもたちに話してくれて、そういう言葉が一番届くんです。私たちとしても、そういう場面に出くわすとすごく嬉しい気持ちになります。
___最後に、遺贈寄付へご興味をお持ちの方へのメッセージをお願いします。
野口)困難を抱えた子どもたちへの教育支援は、長く時間のかかる取り組みです。子どもたちが少しずつ変わっていき、自分の人生を切り拓いていくことが大切だと思っています。人生の集大成としての遺贈寄付は、子どもたちの長い道のりを支えていただく、とても大切なご寄付だと思っています。どんなに些細な質問でも大丈夫です。できる限り丁寧にお気持ちに添うご対応をしていきたいと思っておりますので、少しでもお気持ちが動いた際には、ぜひ私たちに連絡をしてください。
松本)私たちの団体のキャッチフレーズは「未来はつくれる」です。私は、カタリバに設立時から関わっているのですが、20年という歳月が経って、活動を重ねてきた先にある循環が見えるようになってきました。かつて支援される側にいた子どもたちが、今、能登で活躍してくれているのを見ると、本当に未来をつくれるんだと実感しています。
遺贈寄付も、未来をつくる力を持っており、「想いを未来につなげていく」ことを寄付という形で実現するものだと思います。私たちは皆様の想いを受け取り、子どもたちの未来につなげ、よりよい未来をつくっていきたいと思っています。
カタリバは「どんな環境に生まれ育っても、未来をつくりだす力を育める社会」を目指して、 北海道から沖縄まで全国の子どもたちに向けて活動しています。
次世代の日本の若者を応援したい方、自然災害時にいち早く子どもたちに支援活動を届けたい方、生活困窮世帯の子どもたちの成長を長期的に応援したい方などに、これまで支援いただいております。ご関心のある方には、資料をお送りさせていただきます。メールやお電話でのご説明も承っております。
遺贈寄付に関するお問い合わせ窓口
TEL 0120-130-227(平日9:30-17:30)
※携帯・PHSからのお電話も可能です。
フォームからのお問い合わせはこちら
・団体名
認定特定非営利活動法人 カタリバ
・所在地
東京都中野区中野5丁目15番2号
・代表者
代表理事 今村 久美
・設立年
2001年
・受賞歴
2019年 KAIKA Awards 2019 特別賞受賞
2023年 第18回マニフェスト大賞
「ローカル・マニフェスト大賞<市民・団体の部>優秀賞受賞
2024年 「Wantedly Awards 2023」CRAFT部門 Profile Craft 賞受賞 ほか
【活動概要】
ビジョン
どんな環境に生まれ育っても、未来をつくりだす力を育める社会を目指す
ミッション
意欲と創造性をすべての10代へ
活動内容
1. 困窮世帯の子どもたちの居場所施設を運営
子どもたちが安心して過ごすことができる居場所施設を運営しています。毎日の食事や勉強の場があり、何でも相談できるスタッフがいます。長い時間を共にすることでスタッフを信頼し「みんなは家族」と話す子もいます。
2. 災害時の緊急子ども支援
災害時、カタリバはいち早く子どもたちに安心できる居場所と学びの場を作っています。東日本大震災以降、駆けつけた地域は10以上。能登半島地震では、発災2日後に現地入りし、避難所に7か所の居場所を開設。また、受験費奨学金を313人に給付しました。
3. 全国の子どもたちに意欲と創造性を育む教育機会を届ける
カタリバが支援を届ける子どもたちは、北海道から沖縄まで全国で10万人以上。自治体や学校・地域のNPOと連携協定を締結し、一人でも多くの子どもたちに自分の力で未来を切り開くことができる学びの機会を届けています。