紛争や災害、障がい者支援まで。国内外で長期支援を行う活動を支える遺贈寄付に取り組む思いとは?/ AAR Japan
紛争や災害などで困難な状況に直面している人を支える「AAR Japan[難民を助ける会]」。1979年にインドシナ難民支援を目的に日本で発足し、国連に公認・登録された国際NGO団体です。地域や分野を広げながら45年にわたって活動を続けてきたAAR Japanの寄付の取り組みについて、広報部長の吉澤さまと遺贈寄付の担当窓口を務める千ヶ崎さまに聞
吉澤 有紀氏
民間のシステム会社を経て2007年にAARに入職。支援者担当を経て2020年より広報部長。
____AAR Japanで遺贈寄付を始めた経緯を教えてください。
吉澤)動き出した最初のきっかけは、既存の支援者さんからの声でした。長年の支援者さんが高齢になり、「財産を寄付したい」という方がいらっしゃったことが遺贈寄付の始まりです。その後、世の中で遺贈への認知度が上がり、希望される方も増えてきたというところで、2020年に本格的に始動することになりました。
私たちはまず、遺贈寄付に関するチラシを作り、支援者さんへ送る郵送物に同梱してご案内しました。大きな反響がすぐにあるわけではありませんが、既存の支援者さんのなかで資料請求をしてくださる方が少しずつ増えている状態です。
千ヶ崎)私たちAAR Japanは、年に2回、ご寄付のお願いとしてお手紙を2万通ほどお送りしています。そのうちの1回に、遺贈寄付の「相続財産(遺産)の寄付」と「香典・供花代の寄付」の説明を記載したチラシをお届けしています。あわせてホームページに寄付のご案内を細かく掲載したり雑誌に広告を出したり、AAR Japanを知らない方にも案内が届くようにしています。
____どのような経緯でAAR Japanの遺贈寄付に興味を持ち、選ばれているのでしょうか。
吉澤)AAR Japanに10年20年と長い期間寄付をしてくださり、「最後に思いを繋げて残したい」と遺贈寄付に興味を持たれた方が多いでしょうか。また、ご両親や奥さまなどの故人がAAR Japanを支援していることを知り、「思いを繋げたい」という背景から遺贈寄付のお問い合わせを受けたこともありますね。
相続の際に税理士さんに遺贈寄付という仕組みを聞いて、当会にたどり着いたという方もいらっしゃいます。その方は、ウクライナの緊急支援にご興味がおありで、検索して出てきた団体から活動の内容を見てAAR Japanにご連絡をくださいました。
ときには、30年40年とかなり前に一度だけ寄付をしてくださった方が、突然に高額遺贈をしてくださるケースもあります。AAR Japanを覚えていてくださっていたことに驚き、ありがたいことだと実感します。そんな過去の支援者さんと接点を大切にするために、改めておたよりを出す取り組みを行っています。
____遺贈寄付の使途は指定できるのでしょうか。使途の具体的な内容も教えてください。
吉澤)AAR Japanの活動は45年を迎え、活動分野も活動国も増えています。遺贈寄付では、使い道をご指定いただくこともできます。例えば「難民支援に使ってください」というご要望があれば、シリアやウクライナなどの難民・国内避難民のための活動に使わせていただきます。指定がない場合は、当会の活動全般として、そのときどきの状況に合わせて使わせていただいています。
<AAR Japanの6つの活動分野> 難民支援 <活動国> |
____遺贈寄付のお問い合わせのなかで印象に残っていることはございますか?
吉澤)久しぶりの方からの問い合わせは、特に印象に残っています。以前寄付をしてくださった方のお名前で、35年ぶりに遺贈寄付のご連絡をいただきました。その方はすでに亡くなられて代理の方がご連絡をくださったため、私たちは会うことは叶いませんでしたが、AAR Japanを覚えていてくださったことにとても驚きました。
また、ある男性は、お母さまがお亡くなりになって「シリア難民指定」で遺贈寄付をしてくださいました。その方は、お母さまが生前、テレビでシリアの報道を見て心を痛めていたことを聞いていらっしゃったんです。ネットで検索をして、シリア難民支援を行っている当会を知り、遺贈寄付のお申し出をしてくださいました。日ごろからお母さまと会話をされていて、それをもとにAAR Japanを選んでくださったことに、息子さんの強い思いを感じました。いただいた寄付を大切に使わなければ、と改めて感じた出来事です。
千ヶ崎) 私が印象に残っているのは、銀行の遺言信託でAAR Japanへの寄付の手続きをしてくださった方のことです。遺言信託は毎年定額の寄付をずっと続ける信託です。その方は、長年ARRの活動を見てくださっていて、「AAR Japanがこれからも長く続いてほしいから、1回の寄付ではなく遺言信託として毎年定額をずっと続けたい」という気持ちがあったとうかがいました。寄付をしていただく方はさまざまな思いを持たれていらっしゃいます。AAR Japanの取り組みを信頼していただき、この先も応援したいという思いで遺言信託に選んでくださったことに、とても嬉しくありがたいことと思っています。
____遺贈寄付の窓口として大切にされていることを教えてください。
千ヶ崎)窓口として、寄付という温かいお気持ちと、実際に困難な状況にある方たちを繋ぐ仕事をしています。問い合わせてくださった方のお話をお聞きし、その方がどこに関心をお持ちで、どんな形で遺産を生かしてほしいと考えてらっしゃるのか。丁寧に汲み取ることを意識しています。
____AAR Japanに興味を持っている方や遺贈寄付を検討されている方へ、メッセージをお願いします。
吉澤)AAR Japanは45周年を迎え、これから先も国内外でさまざまな活動を続けていきます。
活動の大きな柱に「緊急支援」があり、紛争や国内外の自然災害の緊急期の活動に力を入れていますが、決して1回の支援で終わることはありません。復興・復旧支援まで行っていくことが、私たちの強みです。「支援したい」と託してくださった寄付を、未来まで確実に活用させていただくことをお約束しています。
また、活動の幅が広いことで、ご関心に合わせてご相談にのることができるのも特徴です。「難民の子どもたちを支援したい」「障がいを持つ方を支援したい」「アフリカの学校を支援したい」など、ご意向にあう支援を選択することができます。活動国が増え「仕事でお世話になった国のために使いたい」といったご要望も増えてきました。障がい者の支援を行う団体は国内外で少ないなか、AAR Japanでは障がい者支援をこれまでもこれからも続けていきます。この分野に関心がある方にも選んでいただけることはとても嬉しいです。
このようにさまざまなご寄付で支援が行える団体ですので、安心して託していただければと思います。
<よくある質問>
Q.遺贈寄付の遺言書作成で、事前にもらえるものはありますか?
A.希望者には感謝状を贈呈
Q.寄付で名前を残せますか?
A.プレートなどの設置が可能な場合は対応可
(井戸、学校建設へのご支援など)
Q.寄付金の使われ方を教えてください。
A.ご指定いただいた活動、
例1)900万でウガンダの難民居住区に小学校1校を建設することができます。
例2)160万でケニアの難民キャンプの小学校にトイレ6基を建設することができます。
<代表者からのメッセージ>
AAR Japan理事長 堀江良彰氏
「難民を助ける会」(AAR Japan)は 1979年、「憲政の父」と呼ばれた政治家・尾崎行雄の娘である相馬雪香が、インドシナ難民支援を目的に設立しました。政治・思想・宗教的に中立な立場で、現在は2023年2月に大地震が発生したトルコを含む海外15カ国で、難民支援や被災者支援、障がい者の自立支援などに取り組むほか、日本国内でも地震・台風などの被災者や福祉施設をサポートしています。紛争や災害によって、今この瞬間も世界中で多くの人々が傷つき、大切な家族や財産を奪われ、不自由な避難生活を余儀なくされています。私たち難民を助ける会では、こうした理不尽な境遇に苦しみ、困難に直面している人々を支え、次の時代を担う子どもたちに豊かでより良い未来をつないでいくために活動しています。
災害や紛争で傷つき、難民を助ける会の助けを求める人たちの数は膨大です。そこには多くの子どもたちも含まれています。私たちは支援から取り残される方をなくし、一人一人のニーズに応える支援を届けるために最大限の努力をしていますが、まだまだ支援が足りていないと感じます。より多くの助けを必要とする人々に支援を届けるため、皆さまのご支援が必要です。市民が設立した日本生まれの国際NGOである、難民を助ける会をどうかご支援ください。実り豊かな人生を日本と世界の子どもたちに引き継いでいただくことで、あなたの温かいお気持ちはずっと生き続けます。希望をつなぎ、未来を拓く取り組みへのお力添えをお願い申し上げます。
特定非営利活動法人 難民を助ける会(AAR Japan)
Association for Aid and Relief, Japan(AAR Japan)
<所在地>
東京都品川区上大崎2-12-2 ミズホビル7F
<代表者>
理事長 堀江良彰
<設立年>
1979年11月24日
<活動拠点、活動エリア>
カンボジア、ラオス、ミャンマー、バングラデシュ、パキスタン、アフガニスタン、タジキスタン、ウクライナ、モルドバ、トルコ、シリア、スーダン、ケニア、ウガンダ、ザンビア、日本(16カ国)
<受賞歴>
1997年 AARがメンバーである地雷禁止国際キャンペーン(ICBL)がノーベル平和賞を受賞。
1999年 読売新聞国際協力賞受賞。
2008年 沖縄平和賞受賞。
<活動>
・ビジョン
AARは、一人ひとり多様な人間が、各々の個性と人間としての尊厳を保ちつつ共生できる、持続可能な社会をめざします。
・ミッション
「困ったときはお互いさま」という日本の善意の伝統に基づき設立されたAARは、紛争・自然災害・貧困などにより困難な状況に置かれている人々に必要な支援を届け、明日の社会が今日よりも豊かで希望の持てるものになるようにします。
こうした活動を日本を含めて世界の人々のご支援を得て実践することを通じ、誰もが世界の平和と安定に貢献する主体たり得ることを示すとともに、少数派の人々が拒絶され、弱者が取り残されないような社会の実現に向けて努力します。
・活動内容
紛争・災害あるいは障がいによって社会的に弱い立場におかれた人々を支援する「日本生まれの国際NGO」です。政治・思想・宗教に偏らず、40年余りの実績と使命感をもって、65カ国・地域で活動してきました。現在はトルコ、シリア、スーダン、ケニア、ウガンダ、ザンビア、ラオス、カンボジア、ミャンマー、バングラデシュ、パキスタン、アフガニスタン、タジキスタン、ウクライナ、モルドバ、日本の16ヵ国で支援活動に取り組んでいます。
1.障がい者の自立を後押しする職業訓練校
差別が根強く残るミャンマー。障がい者が就職することは非常に困難です。洋裁・美容理容・パソコンの技術とともに社会で生きるスキルを身に付ける職業訓練校の運営に活用いたします。就労までサポートし、9割が就職を果たしています。
2.地雷・不発弾から子どもたちの命を守る
アフガニスタンでは長く続く武力紛争により、多くの地雷や不発弾が残され、人々は危険と隣り合わせで暮らしています。地雷・不発弾の除去、その危険性や回避する方法を伝える教育、被害に遭ってしまった方のこれからを支える支援を届けます。
3.難民の子どもたちの学びを支え、未来につなげる
ウガンダには近隣国からの多くの難民が暮らしています。親を亡くしたり、悲惨な情景を目の当たりにして心に傷を負った多くの子どもたち。文房具提供、校舎や寮の建設、教員研修を通じた保護支援などを通じて、子どもたちの学びを支えます。
注目ポイント
ウクライナやガザ地区の人道危機に関心が集まる一方で、アジア・アフリカには顧みられない「忘れられた難民たち」が置き去りにされている現実があります。支援から取り残され、希望を失った人々を生み出さないよう、AARは最大限の努力をしていますが、まだまだ支援が足りていません。何卒ご協力のほどお願いいたします。