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100年後も豊かな自然を残すために。遺贈寄付でつなぐ未来の地球環境への想い/日本自然保護協会

公益財団法人 日本自然保護協会

日本での自然保護活動の歴史は古く、1951年に自然環境を保全することを目的として公益財団法人日本自然保護協会が立ち上がりました。50年後、100年後も今ある美しく豊かな自然を継承していくために遺贈寄付をどのように活用されているのか、遺贈寄付専任チームの鶴田由美子さん、芝小路晴子さんにお話を伺いました。

(取材日2024年4月19日)

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(写真左)鶴田由美子さん、(右)芝小路晴子さん

(プロフィール)

鶴田由美子さん:自然系テレビ番組のディレクター・プロデューサーを経て、日本自然保護協会に入職。会報・WEBサイト編集長、事務局長を務め、2017年遺贈寄付チーム立ち上げ。

芝小路晴子さん:株式会社和光で5年ほど販売業務を担当後、日本自然保護協会へ入職。保護活動、会報編集、法人運営業務を経て、2017年より遺贈寄付担当・終活アドバイザー。

目次:

1.自然を守り、地域の資源として自然とともにある暮らしを目指す

___事業概要と活動理念をお伺いできますか? 

鶴田)当会は1951年創立で、日本自然保護協会という名前の通り、日本の自然を豊かに未来に承継していくことを目的に設立された団体です。群馬・福島・新潟県の県境にあって自然豊かな景勝地として知られる尾瀬ヶ原で、かつてそこを水力発電のためのダムにしようという計画がありました。それに反対した植物学者や生態学者、地元の方々が声を上げて、尾瀬ヶ原を守ろうと提唱したことが当会の起源になります。それ以来、日本の自然保護を推進する団体として活動してきました。

日本全国で活動を行い、日本の自然保護団体の代表として、国際自然保護連合などの世界的な自然保護ネットワークの日本委員会の事務局も長年務め、世界の自然保護と日本の自然保護を繋げる役割も担っています。

全国で8万5千人ほどのサポーターの皆様に支えられて活動を続けています。活動理念は「自然のちからで、明日をひらく」。自然を守り、地域の資源として活用することにより、自然とともにある暮らしを継承していくことを目指しています。

 

___長い歴史のある団体ですが、遺贈寄付にはいつ頃から取り組まれているのでしょうか? 

鶴田)2017年頃からチームを立ち上げ、遺贈寄付のご案内や、受遺に向けたご相談の専任担当を2名置いて活動を進めてきました。さまざまな団体に交じって、当会のような環境保護の団体も遺贈寄付を募っていることを知っていただけていると感じることが少しずつ増えてきました。

 

___ご相談内容にはどのようなものがありますか?

鶴田)山林や耕作放棄地、別荘地などの遺贈や寄付ができるかというお問い合わせをよくいただきます。残念ながら、換価して直接活動に供することが基本となりますので、住宅地以外はなかなか当会で不動産のままで受け取ることが難しいのが現状です。こうした不要となられた不動産のお悩みは全国各地で発生しており、相続土地国庫帰属制度が創設されたり、税理士と不動産会社の提携による不要不動産引き取りサービスが開設されるなど、徐々に制度や仕組みができつつありますが、引き取り実績はまだまだ限られた件数とのことですので、さらなる改善が求められていると感じています。

 

___実際に遺贈寄付に興味がある方へはどんなアプローチをされていますか?

芝小路)資料請求時にメールアドレスを教えていただいた方には、不定期でメールマガジンをお送りしています。その中で全国どこからでも参加できるオンラインセミナーやイベントなどをご案内しています。遺贈や終活に関するセミナーだけではなく、「NACS-J市民カレッジ(略称:Nカレ)」という自然にまつわるオンラインセミナーなども月に1回ほど開催しています。

また、日本自然保護協会の会員としてご支援をいただくことも可能です。(※毎年5,000円の寄付を続けていただく個人会員のほかに、ファミリー会員、ユース会員もご用意しています。詳しくはこちら

会員になっていただくと、『自然保護』という会報を年6号お届けしたり、当会のイベントへの参加やオリジナルグッズ・刊行物のご購入に会員価格が適用されるなどの特典(一部対象外)があります。

2.想いを受け継ぐ遺贈寄付。贈る側も受け取る側も意識が変わった

___実際に遺贈寄付に携わる中で、印象に残っているエピソードはありますか? 

鶴田)長く当会をご支援くださっていた方が15年ほど前に退会されたのですが、遺言で当会への遺贈を指定してくださっていました。遺言執行者の行政書士の方から、ご本人様が長年、幼稚園の園長を務められていたことや、自然がお好きで、よく庭に来る鳥を愛でていたことなどを教えていただきました。故人が執筆された幼児教育書にも自然のことが記されていたり、自然保護活動にとても深い共感を寄せられていたことが分かりました。

私たちは遺言執行されてはじめて故人のご遺志に接したため、ご本人に直接御礼を申し上げることはできなかったのですが、託された想いをしっかりと自然保護活動に活用させていただくことが最大の御礼になると考えています。

また最近では、遺贈を検討される中で当会のことをお知りになり、セミナーなどに参加して活動を知ってくださり、生前のうちにご寄付をいただいたり、遺贈寄付の寄付先に当会をご指定くださった方もいらっしゃいます。その方は会社経営に長く携わってこられた方で、お仕事を通じて機器の環境性能の向上に貢献されてきたのですが、自然を守ることに直接貢献するアクションとして、自然保護活動へのご寄付を考えてくださいました。これからも「想いを受け継ぐ」ということを心に留めながら、活動につなげていきたいと思います。

 

___お二人が遺贈寄付の担当として活動される中で、ご自身のお気持ちに何か変化はありますか?

鶴田)自然保護活動というものは、今ある豊かな美しい自然が将来も変わらずこの姿であり続けることが一番の成果です。変化しないことが大切なので、逆に、自然保護活動を支援することがどのような影響を与えるのかが見えにくいという課題があります。

例えば、50年や100年という時間軸で森の生態系を復元する計画を立てる場合、団体が100年後にも活動を続けられているのかという問題もあります。そういう長期の活動計画の中で、遺贈寄付は本当に大きな力になります。長い時間のかかる自然保護活動へのご理解いただけたとき、私たちも大変嬉しく、お伝えしてよかったと感じます。

芝小路)遺贈寄付というものは亡くなった後の話になりますので、どうしてもネガティブに思われがちです。私も最初はそうでしたが、遺贈寄付について学んでいくうちに、すごく前向きな気持ちに変わってきました。

あらかじめ準備しておけば、その後の人生を安心して、豊かに、楽しく暮らすことができると気がついたことは、自分の中では大きな意識の変化でした。その気持ちを多くの方へ、それぞれの目線に合わせてお伝えしていきたいと思っています。

また、急な入院や不慮の事故など誰にでも起こりうる不測の事態に備えて遺言書やエンディングノートの作成なども考えていただきたいと思っています。当会では遺贈寄附推進機構と協働してエンディングノートを作成するセミナーなどを開催しています。

鶴田)環境NGOがエンディングノートの作成講座のようなイベントを企画することに対して、違和感を持たれたり、ネガティブな反応をいただく可能性もあると思っていたのですが、意外にも大変好評でした。皆様にとてもポジティブにご参加いただいたこともあり、自分たちの意識の変化だけでなく、支援者の皆様の意識の変化も感じているところです。



3.遺贈寄付に興味を持っている方へのメッセージ

___それでは最後に、遺贈寄付にご興味をお持ちの方へのメッセージをお願いいたします。

芝小路)活動を続ける中で、少しずつ自然保護活動への遺贈を考えてくださる方が広がってきていることを実感しています。当会の専任チームでもさまざまな提携機関と協力し、受遺後に換価可能な不動産や株式なども含めた遺贈をお受けできるように体制を整え、包括遺贈も条件によっては可能になってまいりました。

鶴田)国際的に活動される団体や、気候変動、動物愛護などに取り組むNPOがある中で、私たち日本自然保護協会は日本国内の自然や野生生物を対象に、森から川、そして海へとつながる生態系の保全に取り組んでいます。

自然保護活動の成果は、貴重な自然や私たちの暮らしを支える身近で豊かな自然を持続可能な形で将来世代へ受け継ぎ続けることにあります。皆様からのご寄付が積み重なり、50年、100年とかかる長期の調査を伴う生態系の復元や、海の中の環境を保全する活動をしっかり計画して行うことができます。日本の豊かな自然を未来に贈る活動に、ぜひご支援をお願いいたします。

4.寄付の使い道について

芝小路)相続財産からのご寄付の場合は、ご遺族からご希望を伺って、自然保護活動のどのような分野に活用するかを決めさせていただきます。遺言による遺贈の場合は、付言事項に自然への想いや、当会へご遺贈いただいた想いなどを記していただければ、遺言執行時に最も適する活動へ使わせていただくことができます。

さきほどお話した遺言で当会へ遺贈くださったケースでは、遺言執行者の方から故人のお人柄や生前の功績をお伺いし、自然観察のボランティアリーダーを育成し、自然体験を普及する活動にご寄付を活用させていただくことになりました。その他、絶滅危惧種の生息環境の保全や、保護した自然を活かした地域づくり、環境教育活動、自然保護の情報発信など、さまざまな分野に使途指定していただくことができます。

5.団体紹介

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団体名

公益財団法人 日本自然保護協会

住所

東京都中央区新川1-16-10 ミトヨビル2F

代表者 理事長 土屋 俊幸

設立年  1951年

受賞歴・実績

国有林野事業業務研究発表会林野庁長官最優秀賞/2019年

日本MAB計画支援委員会事務局(ユネスコエコパーク)/2023年~

 

<ビジョン> 

わたしたちは、日々の暮らしや経済の基盤となり、人々の心や地域の文化の拠り所である大切な自然を守り、人と自然が共に生き、美しく豊かな自然に囲まれて、笑顔で生活できる社会の構築に貢献します。

全国の会員・支援者とともに、自然への理解を広め、自然と共にある暮らしとその喜びを未来に継承します。

<ミッション> 

暮らしを支える自然の豊かさを守り、その価値を広め、自然とともにある社会を実現する。

 

<活動概要>

日本の生物多様性の保全に取り組む公益財団のNGO。全国各地にスタッフや専門家、ボランティアを派遣し、科学的な根拠に基づいた、中立で透明性のある自然保護活動を展開している。自然をしらべ、守り、その価値や自然のしくみを広め、 自然とともにある社会づくりを目指す。英語名の頭文字のNACS-J(ナックジェイ)の愛称で国際的にも知られ、日本の生物多様性の現状や自然保護活動を世界にも伝えている。

主な活動

暮らしを支える自然の豊かさを守り、自然と共にある社会を実現する

1.なくなりそうな自然を守る

一度失われた自然は、二度と取り戻すことはできません。自然のしくみを軽視 した土地や海の利用によって、多くの生き物は絶滅の危機にさらされています。私たちは、地域の方々や専門家と協力し、全国で科学的な独自調査を行い、自然環境の保全上、問題のある開発事業や法制度の見直しや改善提案を続けてきました。白神山地や屋久島、小笠原や奄美・沖縄などの世界自然遺産登録は、そうした取り組みの成果のひとつです。

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2.守った自然で地域を元気にする

自然保護活動が実を結んで開発事業が見直されても、その先の未来が描けなければ、自然を壊す開発計画がまた持ちあがってしまいます。私たちは、 市民団体・行政・企業・研究機関など幅広いステークホルダーと連携して、地域の特徴ある自然の魅力や価値の発信や教育への活用、自然を守りながら生産できる農産特産品の共同開発など、豊かな自然で地域を活性化させる取り組みを進めています。

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    3.自然の守り手を増やし、自然とふれあう場を広げる

    自然に親しみ、自然の大切さを知り、自然の変化にいち早く気づき、自然保護の声をあげる人。そうした ‘自然の守り手’を増やすため、自然観察 指導員や、里地里山のモニタリング調査員の講習会を全国各地で開催しています。指導員講習会はこれまでに3万人が受講し、自然観察会や環境教育を推進し、子どもたちに自然の原体験を届けるための活動に力をいれています。

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