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家に戻れない若者たちが暮らす「自立援助ホーム」から旅立つ時の課題を遺贈寄付で解決したい/認定NPO法人なんとかなる

認定NPO法人 なんとかなる

認定NPO法人なんとかなるは、2005年共同代表の岡本昌宏氏が、自身の立ち上げた会社で児童養護施設出身の若者を受入れたことが活動の原点です。約10年の活動を経て、2016年7月に神奈川県横須賀市を拠点に活動する「NPO法人なんとかなる」を立ち上げました。翌年、共同代表として横須賀市長の経験を持つ吉田雄人氏が加わり、2018年には主に児童養護施設を出て家に戻れない若者が20歳まで暮らすことができる自立援助ホーム「なんとかなり荘」の運営をスタートしました。

住まい・仕事・学びの直接的な支援活動のほか、さまざまな発信を通じて課題への理解や関心を高める取り組みを行う共同代表の吉田雄人さんにお話を伺いました。(取材日:2024年7月29日)

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共同代表 吉田 雄人さん

1975年生まれ。早稲田大学政治経済学部を卒業後、アクセンチュア、早稲田大学大学院(政治学修士)、横須賀市議会議員を経て、横須賀市長(2期8年)。2017年に退任したのちはGR(ガバメント・リレーションズ)を軸に活動を展開している。

目次:

1. 虐待を経験した若者が、コケてもコケても「なんとかなる」社会を

___まずは、団体の活動内容や立ち上げの経緯などを聞かせてください。

虐待などが原因で児童養護施設に入っている若者は、高校を中退したり卒業したりすると、施設を退所しなければなりません。親に頼れない場合、住まいや仕事を自分で探さなければなりませんが、実際には10代後半で家や仕事を探すのは非常に難しく、児童養護施設、少年院、刑務所などを出たあと、家庭に戻れず行き場をなくした若者は、反社会的勢力や風俗などに引き込まれてしまうことが少なくありません。そうではないかたちで自立を目指せるような受け皿をつくることが大事なのではと考え、この活動をしています。

実は、児童養護施設を出た若者は厚生労働省の管轄であり、刑務所や少年院を出所した若者は法務省の管轄になっています。しかし、これらの管轄を越えて両方の若者に対応できるというところに、私たちの団体の価値があると考えています。

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私たちの活動は、もともと共同代表の岡本がとび職や林業に関わる会社を経営しており、その会社で児童養護施設出身の若者たちを受け入れたことがきっかけで始まりました。岡本自身も、思春期に「やんちゃ」をしていた時期があり、そこから立ち直った経験があるため、彼らに自分を重ねている部分もあるのかもしれません。

活動初期は、岡本と寮母だけで若者たちの面倒を見ていましたが、とび職の仕事の厳しさから、すぐに辞めてしまう若者も少なくなく、苦労が多かったようです。その後、もう少しきちんとした体制で若者たちを受け入れる必要があるということでNPO法人化しました。法人設立の翌年、私も共同代表としてこの活動に加わることになりました。「なんとかなり荘」は、神奈川県内に16ある自立援助ホームの中で14番目に設立された施設です。若者の受け入れ以外にも、啓発活動や提言、少年刑務所での講演会、体験者座談会や見学会などを行っています。

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吉田さん(写真右)と団体を設立した共同代表の岡本昌宏さん(写真左)

2. 若者に頼られる瞬間が、この活動をしてよかったと感じる時

___年齢に達して施設を出た後も、若者とのつながりは続いていく場合が多いのですか?

これまでに15人が卒業し、そのうち密につながっているのは2人です。ほかに最近出たばかりの3人は、手続きなどもあって比較的よく来ています。「なんとかなり荘は、難しい若者も引き受けてくれる」と地域で知られているため、対応が難しい若者を紹介されることも少なくありません。また、入居期間が1年数か月と短いこともあり、全員とつながりを継続できるような深い信頼関係を築くのは正直なかなか難しいというのが実情です。つながりが続いているのは、全体の約3分の1程度でしょうか。しかし、中には折に触れて相談に来てくれる子もいます。

少年院や刑務所をでた若者に食事付きの住居を提供する「なんとかでき荘」で支援をした男性のエピソードを一つご紹介させてください。彼は定期的に顔を見せてくれて、一緒に食事をするのですが、ある時、「いらないスーツはないですか」と言われました。よくよく話を聞くと、彼が配管工として働いている職場で、表彰をされることになったというんです。しかし、着ていくスーツがないと困っていました。

私のスーツはサイズが合わなかったため、スタッフに相談したところ、ちょうどサイズの合うスタッフがスーツを貸してくれ、事務局長が靴を貸してくれました。無事に表彰式が終わったあと、心のこもったいい手紙を書いてきてくれたんですよ。成功例ばかりではありませんが、こうして何かあった時に戻ってきてくれるのは本当に嬉しいです。この活動をしていてよかったなと心から思える瞬間です。

3. 今、安心できる住まいと、将来自立するための「生きる力」を

___団体として今、挑戦していること、あるいは今度チャレンジしていきたいと考えていることを教えていただけますか?

現在、2つの挑戦を考えています。1つは、横須賀市内にもう1か所、新たな自立支援ホームを設立すること。2つ目は、日本版IDA(Individual Development Accounts)プログラムの展開を考えています。

まず1つ目についてですが、現在「なんとかなり荘」では、定員6名で個室を用意し、男女同時に受け入れを行っています。男女の受け入れに際しては、入り口を分けたり、仕切りを設けたりする工夫をしていますが、現状では女性の受け入れが多いです。男女別の施設運営ができるよう、もう1か所開設することで、若者がより安心して生活できる環境を提供するとともに、男女双方に対応するスタッフの負担を軽減できればと考えています。

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2つ目のIDAについてですが、これは「Individual Development Accounts:個人開発口座」と呼ばれる、マッチング方式による貯蓄奨励プログラムです。日本ではまだ導入例がありませんが、海外では貧困からの脱却や貧困防止を目的とした財産形成を支援するプログラムとして、複数の適用事例があります。

___日本版IDA(貯蓄奨励プログラム)とはどのようなものですか?なぜそれが、若者たちに必要なのでしょうか?

若者たちは20歳になると施設を出ていきますが、その際、引越し費用や家賃など、新生活の資金として60万円ほどが必要になります。国からの給付金などでその半分の30万円は賄えるとしても、残りの30万円は自分で貯めておかなければなりません。

しかし、家庭を知らずに育ち、お小遣いやお年玉などをもらったことがない若者たちの多くは金銭感覚に乏しく、貯蓄をすることが苦手なケースが多いです。そこで、金銭基礎教育を通じて、彼らが自立するための土台作りをしたいのです。貯蓄ができるようになったら、その貯蓄額と同額をマッチングし、施設を出るときに自立支援金として手渡します。たとえば、15万円を貯めることができたら、さらに15万円を足してあげると、というインセンティブのようなものですね。これが日本版IDAです。

金銭基礎教育と貯蓄推奨プログラムを組み合わせたこの試みを、一定数実施し、効果を検証した上で報告書を作成し、ゆくゆくは国の事業として制度化できるように政策提言をしていきたいと考えています。施設を出た後、生活保護に頼らざるを得ない若者もいますが、そうなる前の段階で金銭教育を受け、自立を支援する制度を国として導入することは、トータルコストから見ても意味があることではないかと思います。

単にお金を配るだけではなく、当事者である若者たちが「社会的な関係の中で支えてもらえている」とか、「一歩を踏み出そうとした時に、誰かが背中を押してくれる」と感じられるような体験をしてほしいと願っています。

貯蓄推奨プログラムを開始するにあたって、昨年(2023年)クラウドファンディングを実施し、集まったご寄付で「なんとかなり荘」の入居者に対してプログラムを実施することができました。

4.遺贈寄付に興味を持っている方へのメッセージ

___遺贈寄付を検討していらっしゃる方へのメッセージをお願いします。

私たちの活動にご関心をお寄せいただき、ありがとうございます。遺贈寄付は、ご自身の思いを未来に託す仕組みです。皆さまのご支援で、国の制度が変わるかもしれない、若者の未来が変わるかもしれない――そんな私たちの活動に託していただければ、必ず有効に活用させていただきます。ぜひ、社会の未来につながるご支援をご検討いただければ嬉しく思います。

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寄付額に応じて、お名前を冠した特別基金を設立したり、新しい施設を立ち上げる際に名前を付ける権利をお渡しすることもできます。現在は「なんとかなり荘」と「なんとかでき荘」の2施設がありますが、今後「なんとかいけ荘」や「なんとかしてくれ荘」、「なんとかやれ荘」など、まだまだバリエーションを増やす可能性があります(笑)。「生きた証」を何らかの形で残したいというご希望に、できる限り対応させていただきたいと考えています。

遺贈寄付や団体に関するお問合せはこちらから
認定NPO法人なんとかなる 寄付担当:高木、堀川
電話:046-890-0177
メール:info@nan-toka-naru.net

5.団体紹介

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・団体名
認定NPO法人 なんとかなる 

・所在地 
神奈川県横須賀市小川町19-5富士ビル3階 16startups

・代表者
代表理事 岡本昌宏/吉田雄人

・設立年
2016年

・受賞歴
2018年 公益財団法人 第15回日本フィランソロピー協会企業フィランソロピー賞
とびたて若者賞
2017年 読売新聞社 第11回よみうり子育て応援団大賞 選考委員特別賞
2017年 公益財団法人 第49回社会貢献支援財団 社会貢献者表彰

<ビジョン>
(コケてもコケても)何度でもやり直すことができる世の中へ

<ミッション>
家で暮らすことが出来ない若者の自立支援

活動概要
家庭で暮らせない若者の自立支援のためには「住まい」「仕事」「学び」の3つの要素が不可欠です。「帰る場所がある」ことから全ての支援が始まり、「働くこと」は社会的自立への大きな柱となります。また、「学ぶこと」は可能性を広げ、自立を促進します。

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    当団体は、この3点セットを提供し、「世代間の連鎖を断ち切ること」「社会的関心を高めること」「制度のあり方を問い直すこと」「施設の『中』『外』を繋いでいくこと」などにも取り組みます。また、現状縦割りで、県や政令市などにより異なる制度を、国の制度として格差なく運用していくことができるよう協議会を通しての要望提出などの働きかけも積極的に行ってまいります。

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